コンクリートの品質や性能は、使用環境やメンテナンスの有無などによって徐々に低下します。あなたがコンクリートの建物や構造物を所有するオーナーなら、「コンクリートの劣化を防いで長持ちさせたい」と考えるのではないでしょうか。
しかし、コンクリートが劣化する原因を知らなければ、適切に対処することは困難です。そこで本記事では、劣化の種類や原因、対処法について具体的に解説します。コンクリートの品質や性能を保つために、ぜひ本記事を活用してください。
コンクリートの劣化と種類
劣化とは、品質や性能が低下して以前の状態より悪くなることです。コンクリートの場合、亀裂が発生したり内部の鉄筋が腐食したりすると、品質や性能は低下していきます。まずは劣化の理由と種類をみていきましょう。
コンクリートが劣化する理由
コンクリートには、空隙(くうげき)と呼ばれる小さなすき間が存在しています。このすき間に、水、酸素、塩化物イオンなどが混入すると、コンクリートの内部で中性化やアルカリ骨材反応といった化学反応が発生します。その結果、コンクリートに亀裂が生じたり内部の鉄筋が腐食したりして、劣化が進行するのです。
劣化の種類
亀裂、鉄筋の腐食、表面の摩耗や変色が、代表的な劣化です。以下の表で、種類別の主な原因を確認しましょう。
劣化の種類 | 主な原因 |
錆汁 鉄筋の腐食 |
中性化 塩害 亀裂 |
表面の摩耗や変色 | 錆汁 水酸化カルシウムによる化学反応 火災など |
亀裂 | 凍害 アルカリ骨材反応 施工不良 |
仮にコンクリート造の建物が劣化したら、美観が損なわれてしまうでしょう。コンクリートブロック塀の場合は、倒壊の危険性が高まります。いずれもオーナーにとって大きなデメリットです。コンクリートの劣化を見つけたら、早急に対処することが大切です。
コンクリートが劣化する原因と対処法
コンクリートが劣化する原因は5つに大別できます。
- 凍害
- 中性化
- 塩害
- アルカリ骨材反応
- 施工不良
対処法もあわせて確認しましょう。
凍害
凍害とは、コンクリート内部の水分が凍結と融解を繰り返すことで亀裂の原因となる現象です。主に冬場の気温が0度を下回る北海道や東北地方などで発生します。
凍害の仕組みがこちらです。
- コンクリート内部の水が冷やされて氷になる
- 氷になることで体積が膨張する
- 体積の膨張によって周囲のコンクリートが圧迫される
- 亀裂が生じる
気温が上昇すると、氷は溶けて水になります。しかし、1度発生した亀裂は、簡単には元に戻りません。亀裂から水や大気が浸入すれば、劣化はさらに進行してしまうでしょう。こうした悪循環が凍害の厄介な点です。
対処法
亀裂を塞ぐ補修作業とコンクリート表面に塗膜防水材を施す方法が有効です。
中性化
中性化とは、コンクリートの性質が強アルカリ性から中性に変化する現象です。中性化は、コンクリート内部に浸入した大気中の二酸化炭素によって引き起こされます。二酸化炭素が、水酸化カルシウムなどのセメント水和物と化学反応を起こすことで発生するのです。
特に鉄筋コンクリートの場合、中性化に注意しなくてはいけません。なぜなら、コンクリートが中性に近づくと、鉄筋の表面に存在する「不動態被膜」が破壊されてしまうからです。不動態被膜には、鉄筋を腐食から保護する役割があります。中性化が進行して不動態被膜が破壊されると、内部の鉄筋が腐食しやすくなるのです。
対処法
中性化を防ぐためには、二酸化炭素を遮断します。効果的な対処法として、コンクリート表面に塗膜防水材を使用するほか、コンクリートを厚くして内部の浸入を防ぐ方法が挙げられます。再アルカリ化工法によって、中性に近づいたコンクリートをアルカリに戻す方法も有効です。
なお、中性化の進行状態を確認するためには、フェノールフタレインという溶液を使用します。フェノールフタレイン溶液を、コンクリートの切断面に散布して色の変化を調べることで中性化の進行状態を判断します。専門知識が必要になるため、自分で調査するよりも専門業者へ依頼した方がよいでしょう。
鉄筋コンクリートの補強・補修の重要性を解説!法定耐用年数もご紹介
塩害
塩害とは、塩化物イオンがコンクリート内部に一定量以上存在することで発生する現象です。鉄筋が腐食する原因となるため、鉄筋コンクリートを所持するオーナーは、塩害に注意しましょう。
そもそも腐食がコンクリートの劣化を招くのはなぜでしょうか。その理由は、鉄筋の腐食によって生じた錆(さび)にあります。腐食によって生じた錆は、元の体積より膨張します。コンクリートの内部で膨張した錆は、周囲のコンクリートを圧迫するため、鉄筋とコンクリートの付着力を低下させたりするのです。その結果、はく離や亀裂が生じます。
なお、塩害の原因となる塩化物イオンは、潮風や道路の凍結防止剤に含まれているほか、コンクリートの内部に含まれている場合もあります。
対処法
塩化物イオンとコンクリートを遮断する方法が有効です。コンクリート表面を塗膜防水材などで保護したり亀裂補修を行ったりして、それ以上の劣化を防ぎます。
また、「電気防食工法」を用いて、劣化の進行を食い止める方法も効果的です。電気防食工法とは、コンクリート表面から、内部の鋼材に向けて電流を供給して腐食を停止させる手法。電気防食工法を実施したいなら、まず専門業者へ相談しましょう。
アルカリ骨材反応(アルカリシリカ反応)
アルカリ骨材反応(アルカリシリカ反応)とは、コンクリートの材料である「骨材」に含まれるシリカ成分とアルカリ成分の間で起きる化学反応のことです。シリカ成分とアルカリ成分が反応すると「アルカリシリカゲル」という物質ができます。
アルカリシリカゲルには、高い吸水性があるため、コンクリート内の水分を吸水して膨張するのです。コンクリート内部で膨張したアルカリシリカゲルは、亀裂やはく離の原因となるためコンクリートの性能を低下させます。
対処法
アルカリ骨材反応は、水の供給によって進行します。そのため、コンクリート表面を塗膜防水材で保護したりひび割れ注入工法を行ったりして、水の浸入を防止する方法が効果的です。
施工不良
コンクリートに施工不良があった場合、コンクリート本来の性能を引き出せていない可能性が高く、通常より劣化が早まるおそれがあります。以下に、施工不良によって生じやすい症状を紹介します。
豆板(ジャンカ)
型枠に流し込んだコンクリートが十分に行き渡らず、骨材が表面に出現している状態です。
コールドジョイント
コンクリートとコンクリートの継ぎ目が、完全に一体となっていない状態をコールドジョイントと呼びます。コンクリートの面が不連続になっているため、耐久性や水密性が不十分になっている可能性があります。
上記のような症状や気になる点があったら、早めに施工業者に問い合わせをしましょう。直接尋ねにくい場合は、別の専門業者に相談することをおすすめします。
コンクリートの劣化を見つけた場合の選択肢
コンクリートの劣化を見つけた場合、主に「自分で補修する」「専門業者に依頼する」という2つの選択肢があります。
自分で補修する
コンクリート表面にある小さな亀裂は、補修材を活用して自分で補修することが可能です。亀裂を補修することで、コンクリート内部に水分や大気の浸入が混入することを食い止められるため、劣化を抑制できます。
ただし、補修作業はあくまで応急処置です。なぜなら、コンクリートの表面に問題がないように見えても、内部の見えない箇所で劣化が進行している可能性があるからです。劣化の状態を正確に把握するためには、専門的な知識や技術を持つ専門業者の力を借りましょう。
専門業者に依頼する
専門業者に依頼すると、劣化の原因をプロの目線で分析してくれます。再発防止策を提案してくれる業者に依頼すれば、将来的なコストも軽減できるでしょう。大切な建物や構造物を長持ちさせるためには、専門業者に依頼する方法が早道です。
なお、コンクリートの劣化を見つけた場合に、最もやってはいけないことが「放置」です。
一般的に、コンクリートを放置しても、自然によくなることはありません。コンクリートの劣化や気になる点を見つけた際は、できるだけ早く専門業者に相談しましょう。
コンクリート壁に水漏れが発生したら?原因や対処法を具体的に解説
コンクリートの劣化は放置せずに株式会社LIFIXにご連絡を
コンクリートは、他の建築材料に比べても耐震性、耐火性、耐久性の高い構造物です。しかし、日常的にコンクリートを使用している以上、ある程度の劣化は避けられません。それでも適切な対応策によって、長持ちさせることは可能です。
もしもコンクリートに劣化が生じたら、ぜひ株式会社LIFIXまでご連絡ください。弊社は、左官工事をはじめとして高圧止水工事や耐震補強工事などの実績を持つコンクリートの専門業者です。直接現地にお伺いして、工事が必要な箇所を丁寧に見極めた上で、適切な工事をご提案いたします。
こちらのページから弊社の概要をご確認ください。